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受賞報告

国際物理オリンピック カザフスタン大会 銀メダリスト 親川 晃一 君へのインタビュー(2014年8月)

以下は,2014年7月の国際物理オリンピック,カザフスタン大会から,見事銀メダルを取って帰ってきた親川晃一君(大阪星光学院高校3年)に行ったインタビューです。

国内予選にあたる物理チャレンジや,国際大会である物理オリンピックの様子などを語ってもらいました。

(インタビュアー:k.s)

親川君,今回はおめでとうございます。

「ありがとうございます。」

カザフスタンから帰ってきたのはいつ頃ですか?

「ええっと,一週間ちょっと前の7月23日です。」

学校とかで結構騒がれたりしたでしょうね。

「まだ学校は行ってないです。SURの講習が帰国後初めての外出です。」

えっ,そうなんですか。

「帰ってきたとき,文部科学省の表敬訪問は行きましたけど。でも出てきたのは副大臣でした。大臣はいなくて。」

マスコミの取材とかは来てました?

「ちょっといたと思います。でもそのときの様子はYouTubeで流すって言っていました。」

それは楽しみですね。

どんどん物理にはまる

やっぱり物理が一番好きな科目ですか。

「今は,ダントツで好きです。でも,高1までは全然興味なかったです。」

ええっ! 興味なかったのに物理オリンピックに挑戦したんですか?

「国内大会は物理チャレンジと言います。これを知ったのは高2の春でした。学校の先生が物理チャレンジの対策をやってくれるというので,受験勉強のつもりで参加したんです。」

いい先生ですね。

「大会の方は出るつもりはなかったのですが,先生に出ろ出ろって言われて出ることになりました。第1チャレンジの会場は天王寺高校で近かったですし。それで,出たら合格しました。」

自信はありましたか?

「ええっと,無かったことにしておいてください。」

あったんだ・・・。

「学校の物理しかやっていなかったし,好きという感じはありませんでした。ただ,物理チャレンジの準備として勉強している間にどんどん面白くなったんです。」

国内大会の「物理チャレンジ」

ちょっとここで,物理チャレンジのことを整理しておきましょう。どういう大会ですか?

「国内の物理コンテストです。その最初の予選に当たるのが第1チャレンジです。まず課題の実験レポートを6月中に提出し,理論のマーク試験を7月に受けます。」

実験の課題はどういうものでしたか。

「温度計を作れというものです。僕の実験はストローの中の空気の膨張を計算して,それを利用して温度を計るというものでした。でも今から考えると,誤差も考慮してなくて,とんでもないレポートでした。理論の方で稼いで合格したと思います。」

なるほど。で,合格したら一か月後の8月の第2チャレンジに進むわけですね。そのときのことを教えてください。

「第2チャレンジは関東の筑波大学でありました。1年毎に岡山大学と交互に開催されているようです。3泊4日で,理論のペーパー試験が5時間,実験をする試験が5時間行なわれます。これは国際大会に合わせてあるそうです。試験の前後で講演会などもあります。」

試験は出来ましたか?

「いや,全然です。実験も二つのうち一つしかできなかったので,完全に無理やと思いました。」

でもその第2チャレンジ,まあ国内の決勝大会ですが,銅賞でしたよね。

「はい。といっても,金賞は6人,銀賞が12人,銅賞は12人ですけど。その30人のうち高2以下の14人が,翌年にある国際大会の代表候補になりました。」

そのあと国際大会までの1年間は,何か研修みたいなものがあるのですか?

「月1回の通信添削指導を受けます。1回当たり大問3問を解いてレポート用紙に書いて提出です。また冬休みには4日間の合宿が東京工科大学であり,次の春休みには代表5人を決める最後の春合宿が同じく東京工科大学で4日間ありました。」

代表決定!

その代表を決める春合宿ですが,どんな感じの選考でしたか?

「1日目は勉強会,2日目に実験の試験が2回あり,これは全然出来ませんでした。3日目と4日目は理論試験が1回ずつあり,これは何とかできました。そのあと自宅に帰るのですが,その4日目の夜7時から,代表に決まった5人だけに電話をかけると言われました。」

うっ。それは緊張しますね。宇宙兄弟に似たシーンがありました。関係ないか。それで?

「7時15分まで待ったときに,もうダメだと思いました。」

めっちゃ臨場感が伝わってきます!

「で,落ち込んでいたら,7時30分に電話が鳴って。」

おお!

「うれしかったです(笑)。」

えっ! それだけ? どれくらいうれしかったですか。

「かなり・・・めちゃめちゃうれしかったです。」

でしょうねえ。

カザフスタンへ

春に代表が決まってから7月の国際大会までの間,また通信添削とかあったのですか。

「ありました。ただし,今度は2週間に1回の割合で計6回。また5/31,6/1には阪大で実験研修もありました。さらに出発直前には東京理科大で2日間の研修もありました。」

すごい。丁寧にやってくれるのですね。で,いよいよ国際大会と。

「はい,7/12に成田を出発して,イスタンブール経由でカザフスタンの首都,アスタナに着いたのが7/13の朝でした。」

アスタナの印象は?

「どこに行ってもきれいでした。」
(注:アスタナは日本の建築家,黒川紀章の都市計画案に基づき開発が続けられている。)

滞在中のスケジュールはどうでしたか。

「到着した翌日の7/14は開会式だけでした。そして7/15が理論試験5時間,7/17が実験試験5時間で,あとの日は観光です。」

答案はいろんな言語で書かれているでしょうから,採点にも時間を十分にかけられる日程ですね。で,結果は・・・。

「7/20の閉会式で表彰があって,日本代表5人のうち4人が銀メダル,1人が銅メダルでした。」

みんなメダルが取れて良かったです。ちなみに資料によると,参加85か国383名のうち金メダルが8%,銀メダルが17%,銅メダルが25%とありますから,親川君は参加者の上位4分の1に入ったわけですね。本当にすごいです。

物理の魅力

では最後の質問です。親川君は今ダントツで物理が好きってことでしたが,物理のどんなところが面白いですか?

「数学を使って自然を理解できる,ってところです。」

す,素晴らしい! いやあ,見事としか言いようがない名言です。数学オリンピックメダリストの方へのインタビューでも名言が飛び出しましたが,それに勝るとも劣りません。ああ,また久しぶりに泣けてきました。それではこの辺でお開きとしましょう。

(2014年8月1日 SURにて)

SUR 最終更新:2018年1月12日
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